遺言のお役立ち情報

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遺言書を書き直したい!

遺言書は何度でも書き直すことができます。方式は問いません。最初の遺言書が公正証書遺言であったとしても、自筆証書遺言で書き直すことができます。

 

前の遺言は全てが無効になるわけではなく、新しい遺言と抵触する部分のみ無効となります。例えば最初の遺言で「不動産を長男Aに、預貯金を次男Bに相続させる」と書いて、新しい遺言で「預貯金を三男Cに相続させる」と書いた場合、最初の遺言の「不動産を長男Aに相続させる」という部分は有効のままです。

 

遺言書は後々の争いや手間を考えると公正証書にすることが望ましいのですが、公証人手数料等の費用がかかるため、まずは自筆証書遺言を作成して度々書き直し、内容が固まってもう更新する必要がなくなったり、いよいよ死期が近づいたといった時に公正証書にするやり方が良いかもしれません。(ただし、いざ体調を崩してから公正証書遺言作成の手続きをするのは大変なので、なるべく元気なうちに準備しておきましょう。)

 

なお、遺言書の書き直しをしなくても実質的に財産の配分を変えるテクニックもあります。

 

預金の額を変える

例えば、「X銀行○○支店(普通預金 口座番号XXXX)の預金債権を長男Aに、Y銀行△△支店(普通預金 口座番号XXXX)の預金債権を次男Bに相続させる」という遺言を書きます。遺言書には残高まで記載する必要はありません。遺言を書いた時点でX銀行に500万円、Y銀行に500万円あったとして、後からやっぱり長男Aに多めに相続させたいと考え直した時は、Y銀行からX銀行に振り替えればよく、遺言書を書き直す必要はありません。極端な話、Y銀行の残高をゼロとすることもできます。

 

生命保険の受取人(受取比率)を変える

財産の残し方として、生命保険に加入し、保険金の受取人を相続人にしておくという方法があります。例えば、受取比率を「妻50%、長男50%」としていても、後から「妻50%、長男30%、次男20%」というように変更することができます。生命保険の保険金は遺産(相続財産)ではないのでそもそも遺言書に記載する必要もありません。保険会社で手続きをするだけで容易に配分を変更することができます。

相続させたい人(受遺者)が先に死んでしまった場合

相続図例1

配偶者も子もいないAさんが、妹Bに全財産を相続させる旨の遺言を書いたとします。両親は既に他界していますが、他に弟Cがいます。

 

Aさんが亡くなった時に、妹Bが既に亡くなっていた場合、遺言の効力はどうなるのでしょうか。妹Bには子D(Aさんから見て姪っ子)がいます。妹Bに代わって姪Dが全財産をもらう権利があるのでしょうか。

 

これについては平成23年2月22日に最高裁で判決が出ました。財産をあげるはずの人が先に死んでしまった場合、その遺言は効力を生じないとのことです。この場合は弟Cと姪Dが2分の1ずつの法定相続割合で相続することになります。

 

仮に、妹Bが先に亡くなっていた場合に姪Dに全財産をあげたいのであれば、その旨をきちんと遺言書に明記する必要があります。「BがAの死亡以前に死亡している場合は、Dに相続させる。」という風に場合分けをして書きます。これを予備的遺言といいます。

 

比較的新しい判例なので、平成23年以前に遺言を書いて保管している(あるいは誰かに保管してもらっている)方は再度見直しをすることをお勧めします。

 

ちなみに、妹Bの生死に関わらず最初から姪Dに全財産をあげたい場合、遺言書にそのように書けばよいのですが、書き方にちょっとした注意点があります。

 

Aさんの死亡時に妹Bが存命であれば姪Dは法定相続人にはなりません。しかし、妹Bが死亡していれば姪Dは(Bを代襲して)法定相続人になります。遺産に不動産が含まれている場合、法定相続人に対しては「遺贈する」よりも「相続させる」と書いたほうが手続きの煩雑さや費用の面でメリットがあります。(相続登記のお役立ち情報「相続と遺贈の違い」参照)

 

「遺贈する(Bが死亡している場合は相続させる)」というように遺言の書き方にちょっと工夫を加えれば、相続発生後の手続きがラクになります。


不動産の書き方にご注意!

遺言書や遺産分割協議書を自分で書く場合は、不動産の表記に注意しなければなりません。

 

土地は@所在、A地番、B地目、C地積を、建物は@所在、A家屋番号、B種類、C構造、D床面積を、漏れなく正確に表記します。不動産の登記事項証明書(法務局で取得できます)から必要な情報を転記すればよいのですが、なかなか面倒です。

【土地の記載例】

 

 所在 ○○市○○一丁目
 地番 12番3
 地目 宅地
 地積 123.45平方メートル

※私道の持分がある場合は、その土地と持分割合も漏らさず記載しなければなりません。

 

【建物の記載例】

 

 所在 ○○市○○一丁目12番地3
 家屋番号 12番3
 種類 居宅
 構造 木造スレートぶき2階建
 床面積 1階 50.99平方メートル
     2階 49.12平方メートル

 

また、マンションの1室の場合は、一棟の建物の表示と敷地権の表示も必要となります。

【マンションの記載例】

 

 一棟の建物の表示
  所在 ○○市○○一丁目12番地3
  建物の名称 ○○マンション

 

 専有部分の建物の表示
  家屋番号 ○○一丁目12番3の101
  建物の名称 101号
  種類 居宅
  構造 鉄骨造1階建
  床面積 3階部分 60.12平方メートル

 

 敷地権の表示
  符号 1
  所在及び地番 ○○市○○一丁目12番3
  地目 宅地
  地積 1234.56平方メートル
  敷地権の種類 所有権
  敷地権の割合 1000分の35

一棟の建物の名称が存在しないこともあり、この場合は一棟の建物の構造と床面積も記載しなければなりません。また、マンションと敷地が一体化(「敷地権化」といい、登記簿から読み解くことができますが、一般の方には困難です)されていない場合があり、この場合は敷地とその持分割合を建物とは別に記載しなければなりません。

 

遺言書や遺産分割協議書の不動産の表記が完璧でなかったとしても、どの不動産か十分に特定できるならば法的には有効となる可能性はあります。しかし登記手続きに使用することはできないので、遺産分割協議書を修正するか作り直す必要があります。(遺言書は本人の死後に書き直すことはもちろんできないので、遺言と同じ趣旨の遺産分割協議書を相続人全員で作る必要があります。)

 

専門家の力を借りず自力で作った遺言書や遺産分割協議書で、不動産の表記が完璧なものはほとんど見たことがないので十分にご注意ください。

 

2019年1月13日より財産目録は手書きでなくともOKとなりました。パソコンで作成したり、登記事項証明書を添付することもできます。ただし、1枚ごと(両面に記載がある場合は両面とも)に署名押印が必要となります。

ダメな遺言書の実例 - 土地の分け方を面積で指定

不動産の表記が完璧な自筆証書遺言はほとんど見たことがありませんが、久々にきちんと表記されたものを見ました。と思ったらその表記の最後に「うち100平方メートル」と書いてありました。この土地は300uです。遺言書を読み進めると、次男の相続分として全く同じ土地の記載があり最後に「うち200平方メートル」と書いてありました。前の100uは長男の相続分の記載でした。

 

遺言書を書いた後に土地を分筆したのかな?と思って最新の登記事項を確認しましたが、300uの土地1筆のままです。1筆の土地を面積で分けて別々の所有権の登記を入れることなんてできません。また、分筆しようにもこの記載だけでは具体的にどう分ければいいのか(例えば、東西で分けるのか南北で分けるのか)はっきりしません。

 

ダメ元で管轄法務局にこの遺言書でもって「長男持ち分3分の1、次男持ち分3分の2の共有」で相続登記できるか聞いてみたところ、意外にもOKとの回答が返ってきました。

 

本件は相続人(長男・次男)に異論がなかったこともあり、たまたま遺言書が使えましたが、多くの場合はダメだと思います。1つの土地全部を共有しているということと、1つの土地の一部と他の部分をそれぞれ単独所有しているということは、意味合いが異なるからです。

危急時遺言とは - 死期が目前に迫ってる時の手段

危急時遺言の手順

遺言書のほとんどは自筆証書遺言か公正証書遺言のどちらかですが、死が目前に迫っている状況では危急時遺言という方法をとることもあります。手順は以下の通りです。

 

1.証人3人以上の立会いをもって、遺言者が証人の1人に遺言の趣旨を口授する。

口がきけない場合は、遺言者は証人の前で遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述することができる。

2.口授を受けた証人が、これを筆記する。
3.口授を受けた証人が、遺言者および他の証人に筆記した内容を読み聞かせる。(または閲覧させる。)

遺言者や証人が耳が聞こえない場合は、筆記した内容を通訳人の通訳によりその遺言者または証人に伝えて読み聞かせに代えることができる。

4.各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し印を押す。

 

確認と検認の両方が必要

危急時遺言は、遺言の日から20日以内に家庭裁判所に「確認」してもらわなければ効力を生じません。証人の1人または利害関係人から家庭裁判所に請求して行います。

 

また、自筆証書遺言と同様に家庭裁判所による「検認」の手続きも必要です。

 

「確認」が遺言が遺言者の真意によるものであることを確認する手続きであるのに対し、「検認」は遺言の形式等を確認して証拠保全する手続きであり遺言の内容について判断するものではありません。両者は目的が異なる別の手続きなので、どちらか一方で兼ねることはできないのです。

 

容体が持ち直すと無効になることも

危急時遺言は、普通の方式(自筆証書遺言や公正証書遺言)によって遺言をすることができるようになったときから6ヶ月間生存するときは無効になります。あくまで緊急事態における手続きなので、容体が持ち直したならば普通の方式で改めて遺言書を作ってください、ということです。