相続登記のお役立ち情報

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相続と遺贈の違い

相続」できるのは当然ながら相続人だけです。これに対し「遺贈」は相続人にも相続人以外にもすることができます。遺言で相続人であるAさんと相続人ではないBさんに財産を与えたい場合、「財産XをAに相続させる」と書くことも「財産XをAに遺贈する」と書くこともできます。一方、相続人でないBさんについては「財産YをBに遺贈する」と書くのが正しいのですが、「財産YをBに相続させる」と書いても無効ではなく「遺贈」とみなされます。

 

相続と遺贈で結果的に違いはないのですが、財産が不動産の場合、登記手続きが違ってきます。

 

相続は単独申請、遺贈は共同申請

遺言で「Aに相続させる」とあれば、Aのみで登記申請可能です。一方「Aに遺贈する」とあれば、Aと遺言執行者(遺言執行者が指定されていない場合は相続人全員)と共同で登記申請を行う必要があります。なお、遺言で遺言執行者をAと指定することもでき、この場合は実質的にAのみで登記申請可能となります。

 

また、登記に必要な書類も変わってきます。遺言書や被相続人の戸籍謄本、財産を取得する人の住民票は共通して必要ですが、遺贈の場合はこれらに加えて権利証(または登記識別情報)や印鑑証明書(遺言執行者または相続人全員のもの)が必要になります。

 

相続より遺贈のほうが登録免許税が高い

相続の登録免許税は固定資産税評価額の0.4%ですが、遺贈は2%です。ただし、遺贈の場合であっても財産を受ける人(受遺者といいます)が相続人であることを証する戸籍謄本等を添付すれば0.4%にできます。

 

相続は住所変更登記が不要、遺贈は必要

被相続人の登記簿上の住所と死亡時の住所が異なっている場合、遺贈の登記の前提として住所変更登記が必要となります。一方、相続の場合は住所の変更を証する書類(住民票や戸籍の附票)を添付する必要はありますが、別途住所変更登記を行う必要はありません。遺贈の場合は登記申請が1件増えるため、その分の登録免許税や司法書士費用が余計にかかることになります。

 

総じて、相続人に財産を残す場合は、遺言の文言は「相続させる」としておいたほうがよいでしょう。

住所証明書類が一部欠けている場合

相続登記において登記上の住所と死亡時の住所が異なっているときは、住所の繋がりを証明する必要があります。具体的には住民票や戸籍の附票を添付するのですが、古いものは5年で廃棄されてしまうため、繋がりを証明できないことがあります。この場合は権利証や上申書などが必要となり、少し手続きが面倒になります。

 

大体は登記上の住所が記録された書類が既に廃棄されているというケースなのですが、先日、中間が抜けているというケースに遭遇しました。登記上の住所の記載のある戸籍の附票と、最後の住所地の記載のある戸籍の附票は存在するのですが、その中間の戸籍の附票が廃棄済みで取得できないというケースです。

 

そんなことがあるのか、と思われるかもしれませんが、あり得ます。戸籍の附票は本籍地で保管されています。このケースでは婚姻により本籍地を移った後、戸籍の附票が改製され古いものが廃棄されてしまっていました。ですが婚姻前の本籍地の戸籍の附票は残っていました。その人が婚姻で籍を抜けても他にその籍に入っている両親等が存命の場合は戸籍の附票は閉鎖されないので、残っていることは大いにあり得ます。

 

登記簿上の住所にかつて住んでいたことを証する戸籍の附票は存在するし、本籍地を移ったことは戸籍謄本から、最後の住所は最新の戸籍の附票から明らかなので、別に中間が抜けていても何も問題ないのでは、と思い、管轄法務局に問い合わせました。回答は、「中間の戸籍の附票の廃棄証明書があるならOK(権利証や上申書などは不要)」とのことでした。

被相続人の登記名義が旧姓のままの場合

登記上の住所や氏名に変更が生じている場合、最新の情報に変更しなければならないのが大原則です。しかし、相続登記については、例外的に住所・氏名変更登記を省略していきなり相続による所有権移転登記をすることが可能です。ただし、住所や氏名を変更していることを証する書類(住民票や戸籍謄本等)を添付する必要はあります。

 

住所が最新のものと異なっていることはよくあるのですが、氏名が相違しているケースは稀です。ある相続案件で、被相続人である山田花子さんが不動産を複数所有しており、一部の不動産は旧姓(田中花子)のままとなっていました。しかもこれらの不動産は全て他の方との共有となっていました。

 

共有の場合、相続登記申請書に書く登記の目的は「〇〇持分全部移転」となり、登記上もそのように記載されます。この○○が山田花子なのか田中花子なのか迷いました。亡くなった時点の名前である山田花子に決まっているじゃないかと思われるかもしれませんが、前述の通り相続登記では氏名変更登記が省略されます。つまり、旧姓の田中花子名義となっている不動産については、登記記録上に突然山田花子という謎の名前が出現することになるのです。(下の名前でわかるでしょ、と言われればそれまでですが。。でも下の名前も変わる可能性はありますからね。)

 

管轄法務局に問い合わせたところ、旧姓となっている不動産も含め全て「山田花子持分全部移転」でよいとの回答でした。ただし、登記記録上は旧姓の不動産については「田中花子持分全部移転」になるとのことで、実際にそのように登記されました。法務局のシステム上、登記名義人と異なる名前を記載することができないそうです。

数次相続の中間省略登記

相続図例2

実際に経験したちょっとややこしい相続です。

 

Aは夫婦BCを養子にしていました。BC間には子Dがいました。CはAよりも先に亡くなり、BはAが亡くなった後に亡くなりました。

 

Aは不動産を所有していました。結論から言うとDが相続することになるのですが、この相続登記はどのように申請すべきでしょうか。

 

このケースはAの後にBが亡くなっているので、2回相続が発生しています。数次相続の場合、中間の相続が単独相続ならば中間の相続登記を省略して登記上の所有者から直接最終的な相続人へ所有権移転登記をすることができます。本来2回相続登記すべき所を1回で済ませられるので、登録免許税等の費用面でもメリットがあります。

 

では今回の件は中間省略可能でしょうか。CはAよりも先に亡くなっていますので、Aの相続人はB1人のようにも思えます。1人ならば単独相続ということなので中間省略ができます。しかし、実はDがCを代襲して相続人になるので、Aの相続人はB、Dの2人であり、結論として中間省略はできません。

 

原則通り、A死亡によりB2分の1、D2分の1の割合で相続した登記と、B死亡によりBの持分2分の1をDが相続した登記を分けて申請する必要があります。結果としてDは所有権全てを取得することになります。

 

なお、AとCの養子縁組よりも前にDが生まれている場合は、Aの相続においてDは代襲相続人になりません。この場合は中間の相続人がBのみとなるので、中間省略が可能です。