相続税のお役立ち情報

相続税のお役立ち情報

相続税のお役立ち情報

相続税対策 - 不動産の暦年贈与

贈与税は1年に110万円までなら非課税です。なので、不動産の相続税対策として、生前のうちに毎年110万円を超えない程度に少しずつ贈与する方法があります。

【例】A(親)からB(子)へ不動産の持分を毎年5分の1ずつ贈与
※登記簿の記載は以下のようになります。
平成25年×月×日 所有権一部移転 共有者 持分5分の1 B (A:5分の4、B:5分の1)
平成26年×月×日 A持分一部移転 共有者 持分5分の1 B (A:5分の3、B:5分の2)
平成27年×月×日 A持分一部移転 共有者 持分5分の1 B (A:5分の2、B:5分の3)
平成28年×月×日 A持分一部移転 共有者 持分5分の1 B (A:5分の1、B:5分の4)
平成29年×月×日 A持分全部移転 所有者 持分5分の1 B (Bの単独所有)

 

ただし、以下の点に注意すべきです。

 

登記も贈与した年のうちにしなければならない

本来、登記をするかしないかは自由なので、贈与があっても登記する義務はありませんし、いつ登記するかも自由です。しかし、非課税の恩恵を受けるためには贈与のあった年のうちに登記もしなければなりません。上記の例でいうと、平成29年にまとめて5回分の贈与を登記しても非課税の恩恵は受けられないということです。

 

一括贈与とみなされて課税されるおそれがある

形の上では毎年少しずつ小分けにして贈与していても、最初から全て贈与する意図だったと税務署に判断されてしまうと、一括贈与とみなされて贈与税が課税されることがあります。これを避けるために、日付を毎年変えたり、わざと110万円を少し超える贈与をして少しだけ贈与税を納める人もいるようです。(どんな小細工をしても税務署に一括贈与と判断されてしまえばアウトですが。。)

 

相続時精算課税制度を選択した場合は使えない

相続時精算課税制度とは、2,500万円までは贈与税がかからず相続時に相続税が課される(つまり、課税を先延ばしにできる)制度です。この制度は暦年贈与と併用することはできず、一度選択すると二度と暦年贈与の恩恵(毎年110万円まで非課税)は受けられなくなります。不動産が異なる場合でも関係ありません。この制度を利用するかどうかは当事者ごとに選択できますが、例えばAB間で不動産Xの贈与の際に相続時精算課税を選択した場合は、後で不動産Yを贈与する際に暦年課税は使えないということです。ただし、不動産Xの価値が2,500万円に満たない場合は、不動産Yについても相続時精算課税の対象となります(不動産XとYの価値を合計して2,500万円まで)。

生命保険を活用した相続対策

生命保険は相続において以下のようなメリットがあります。
※以下、保険契約者および被保険者が被相続人で、保険金受取人が相続人である生命保険を前提として記述します。

 

非課税枠がある

生命保険の保険金は被相続人の財産ではないので本来は相続税がかからないのが筋なのですが、実際は「みなし相続財産」として相続税が課税されてしまいます。しかし、特別な非課税枠があり、以下の金額までは非課税となります。

500万円 × 法定相続人の数(保険金を受け取らない人もカウントします)

もちろん基礎控除の恩恵(「3000万円+600万円×法定相続人の数」までは非課税)も受けられます。現金や預貯金をそのまま残すよりも生命保険にしたほうが相続税対策上は有利ということになります。

 

遺留分減殺請求が及ばない

生命保険の保険金は相続税の課税において相続財産と「みなされる」だけであって、相続財産ではありません。従って、遺留分減殺の対象外となります。特定の相続人に、他の相続人の遺留分を侵害する程の財産を残したい場合、生命保険をうまく活用することで相続争いを避けることができます。

 

当面必要な現金がすぐに用意できる

相続発生後は、葬儀費用などある程度の現金が取り急ぎ必要となります。また、相続税がかかる場合は10か月以内に納める必要があります。遺産の大部分が不動産で現預金があまりない場合、相続人が現金を用意できず困ることがあります。この点も生命保険を利用し、相続人に保険金が渡るようにしておくことで解決を図ることができます。

 

また、預金が十分にあったとしても、銀行における相続による払い戻しには相当の手間と時間がかかってしまいます。生命保険であれば比較的簡易な手続きで短期間で保険金が支払われるので、この点においてもメリットがあります。

遺贈にかかるのは贈与税?相続税?

例えば、妻と子がいるならば、弟は相続人になりません。この場合、遺言で弟に財産の一部を遺贈したら、これにかかる税金は贈与税でしょうか、それとも相続税でしょうか。(贈与税のほうが税率が高くなります。)

 

答えは「相続税」です。なお、全く血縁関係のない赤の他人に遺贈する場合であっても同様です。

 

基礎控除の恩恵は受けられますが、基礎控除額の算定にあたり弟は法定相続人にカウントされません。子が1人だとして、法定相続人は妻と子の2人となり、基礎控除額は以下の通りとなります。

3,000万円 + 600万円 × 2人 = 4,200万円

遺産の総額が基礎控除額以下であれば相続税はかかりませんが、基礎控除額を超える場合は弟にも相続税がかかります。この場合、税額は通常より2割高くなってしまいます。配偶者、子、父母以外の人が財産を取得する場合は2割加算する決まりがあるからです。

未支給年金は相続財産ではない!

年金は偶数月の15日にその前月と前々月の2か月分が支払われます。例えば6・7月分の年金は8月15日に支払われます。年金を受け取っていた人が死亡した場合、「年金受給権者死亡届(報告書)」を提出しなければなりません。これを提出せずに死亡後も年金を受け取り続けることは違法ですし、もし手続きが遅れて年金が振り込まれてしまった場合は返還しなければなりません。

 

年金は死亡した月の分までもらうことができます。日割計算はしません。例えば8月10日に死亡したならば、8月分まではもらえます。ところが年金受給権者死亡届を提出すると振込はストップするので6・7・8月の3か月分が未支給の状態となります。未支給年金は本来死亡した方が受け取るはずだったものなので遺産(相続財産)に含まれるように思えますが、実は含まれません。遺産ではないので相続税はかかりませんし、遺産分割協議の対象にもなりません。国民年金法に以下のような規定があります。

<国民年金法 第19条第1項>
年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかつたものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の三親等内の親族であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。

上記の「自己の名で」というのがポイントです。相続人の立場として被相続人の権利を主張するのではなく、自分自身の権利として請求できるということです。

 

なお、「生計を同じくしていたもの」という条件がありますが、日本年金機構に聞いてみたところ、実際はかなり広く認めてくれるようです。必ずしも同居している必要はなく、施設に度々面会に行っていた程度でも認められるとのことでした。

 

先の8月10日に亡くなった例で、8月15日に6・7月分の年金が振り込まれてしまった場合、返還しなければなりません。生きていた期間の分なのに返還するのはおかしい気もしますが、8月10日時点で受け取っていなかった未支給年金は国民年金法に定められた請求権者のものであり、被相続人のものではないので返還する必要があるのです。

家なき子の特例とは?

相続した土地の価格を減額できる小規模宅地等の特例というものがあります。価格を低くできれば相続税も減りますし、場合によっては納めなくてよくなるかもしれません。

 

その中で、亡くなった方が居住していた宅地について80%減額できる規定があります。実際の価格の2割になるわけですから大変大幅な減額です。

 

配偶者は同居していてもしていなくてもこの規定の適用を受けられます。親族は同居していれば適用を受けられます。また、同居していない親族であっても、一定の要件を満たす場合は適用を受けられます。その要件の1つに「相続開始前3年以内に自分または配偶者の持ち家に居住したことがないこと」というものがあるので、通称家なき子の特例と呼ばれます。

 

家なき子の特例の別の要件に「相続した宅地を相続税の申告期限まで有していること」というものがあります。相続税の申告期限は「相続を知った日の翌日から10か月以内」です。もし売却したい場合であっても、特例を受けるためにはこの期限までは所有していなければならないということです。ただし、そこに居住している必要まではありません。

 

なお、小規模宅地の特例を受けるためには申告が必要です。80%減の結果、相続税がかからないことになるとしても、申告は必要なので注意が必要です。