
借金がある等の理由により相続放棄したい場合、家庭裁判所へその旨を申し立てます。なお、相続開始を知った時から3か月以内に手続きを行う必要がありますので、相続放棄をご検討の方はお早めにご相談ください。
※以下の情報もご参照ください。
・相続の基礎知識
・遺産分割協議のお役立ち情報
項目 | 報酬額(税別) | 実費 |
---|---|---|
相続放棄申し立て |
30,000円(※1) |
収入印紙800円/1通、郵便切手(※2) |
戸籍謄本等収集 |
1,000円/1通 |
戸籍謄本:450円/1通 |
相続放棄申述受理証明書取得(※4) | 1,000円/1通 |
収入印紙150円/1通 |
その他 | − | 郵送費、交通費等 |
※1 3か月経過後の場合は+30,000円
※2 裁判所により異なります。
※3 役所により異なります。
※4 登記手続き等で放棄の証明書が必要な場合、取得請求する必要があります。
<モデルケース>
相続放棄申し立て | 30,000円 + 15,000円 × 2名 = 60,000円 |
戸籍謄本等収集 | 1,000円 × 4通 = 4,000円 |
相続放棄申述受理証明書取得 | 1,000円 × 3通 = 3,000円 |
司法書士報酬合計 | 67,000円 + 消費税 = 73,700円 |
相続放棄申し立て |
<収入印紙>800円 × 3通 = 2,400円 |
戸籍謄本等収集(手数料) | 450 × 3通 + 300円 × 1通 = 1,650円 |
相続放棄申述受理証明書取得 |
<収入印紙>150円 × 3通 = 450円 |
その他(郵送費、交通費) | 3,000円(仮定) |
実費合計 | 9,084円 |
夫が借金を残して他界し、妻と子が相続人になったとします。遺産に不動産があったとして、これを売却しても借金を返済しきれない場合、相続放棄をすることになると思います。
では、妻も子も家庭裁判所に相続放棄を申し立て、受理されたとして、それで全ての責任から逃れられるのでしょうか?まず、借金を返済する必要はなくなります。ですが、不動産の管理はどうでしょうか?もう相続放棄したのだから放ったらかしにして良いのでしょうか?民法940条1項に以下のような規定があります。
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
「その放棄によって相続人となった者」とは、繰り上げで相続人となった人のことで、妻と子が放棄した場合は両親や祖父母が、両親・祖父母も相続放棄したり既に死亡している場合は兄弟姉妹が相続人になります。
妻と子が相続放棄した際、繰り上げで相続人となる人にその旨と借金がある旨を伝える必要があるでしょう。繰り上げ相続人が借金も含め遺産を相続するというならば、その人に不動産を引き渡せば妻と子は完全に責任から解放されます。しかし、通常は繰り上げ相続人も相続放棄をするでしょう。
繰り上げ相続人も含め全員が相続放棄をすると、誰も相続人がいなくなります。この場合、家庭裁判所に対し「相続財産管理人」を選任するよう申し立てることになります。相続財産管理人には通常弁護士が選任されます。弁護士は不動産を売却し、借金の返済に充てる手続きをします。
問題はこれに掛かる費用です。相続財産管理人の選任申し立てにおいて、「予納金」を納める必要があります。予納金とは、相続財産管理に掛かる経費や相続財産管理人(弁護士)の報酬に充てられるお金です。金額はケースバイケースですが、100万円程の予納金を求められることもあります。
妻や子は相続放棄をして1円も財産が入ってこないにも関わらず、100万円払って相続財産管理人の選任を申し立てる必要があるのです。酷な話ですが、これをしない限り不動産の管理義務から解放されません。管理を怠ったがために不動産の価値が下がり、借金の返済に充てる額が減ってしまった場合、責任を問われる可能性があります。
相続放棄は3か月以内にしなければなりませんが、正確には相続開始からではなく相続開始を「知った時」から3か月です。この期間を過ぎると相続を承認したものとみなされてしまいます。また、3か月経過前でも預貯金の解約等をしてしまうと相続を承認したとみなされる恐れがあるので注意が必要です。(相続するか放棄するか決めかねている場合は、遺産には一切手を付けないほうが無難です。葬儀費用に充てる目的で遺産の現金を使用したとしても、相続を承認したとみなされる可能性はあります。)
資産と負債のどちらが多いのか調べるのに時間がかかる場合、「3か月じゃ足りないから伸ばしてくれ」と家庭裁判所に申し立てることができます。(「熟慮期間の伸長」といいます。)また、既に3か月を経過してしまった場合でも、相当の理由があれば相続放棄できることがあります。相当な理由とは、例えば「借金がそんなに多いとは知らなかった」といったことです。ただし、同居の親族など近しい人が亡くなったのに資産・負債の状況を調べる努力をせず放置していて3か月を過ぎた場合、相当な理由とは認められない可能性が高くなります。また、借金の通知が郵便で届いていた場合、「開封していないから知らなかった」という言い分は通らないと思ったほうがよいでしょう。
「3か月を過ぎていてもウチに頼めば相続放棄できます!」と高らかに謳っている事務所をたまに見かけますが、熟慮期間の伸長にせよ3か月経過後の相続放棄にせよ、認められるかどうかは裁判所の判断になります。相続放棄する可能性が少しでもあるのなら、お早めにまずはご相談ください。
熟慮期間の伸長が認められたとしても、準確定申告の期限(4か月)は伸長されません。4か月を経過してしまうと延滞税等が課されることになるのでご注意ください。(準確定申告とは、その年の1月1日から亡くなった日までの確定申告を行うことです。毎年確定申告を行っていたのなら必要になると思われます。)